優しい顔
もうすぐ全国大会が始まろうとしていたある日の朝練のまえ・・・。
「おはよう、貞ちゃん!!」
「あぁ。おはよう。。」
いつも元気いっぱいで話し掛けてくるのは俺の幼馴染でクラスメートのだ。
いま、俺が集めた彼女のデータは・・・。
『 15歳。かに座のA型。
我が青学の敏腕マネージャーで、身長は159cm・体重は48kg。
趣味→買い物(ちなみに、衝動買いが激しい)
特技→料理(よく部活の時に作ってきてくれて、部員が喜ぶ確率及び惚れる確率はともに97%という所だ。)』
ちなみに言わせて貰うと、俺はの事が好きだ!!
この集めたデータはあくまで、身体測定でたまたまが見せていたのをデーター帳に書き移したものであって、俺が個人で手に入れたものではない。なぜ好きなのに、自分だけの特別データを取ろうとしないかというと、やはり、自分自身のデータに頼ってしまい、それが本当だと信じてしまう可能性があるからだ。
まぁ、これが俗に言う“惚れた弱み”というものだろうか?
前に、“彼氏はいない”と言っていたから、誰でも狙えるわけで・・・。
「全員集合!!」
・・・・・そして、朝練がいつものようにはじまる・・・。
「あっ。しゅうすけ、英二くん。ちょっと手伝って欲しいんだけど、いいかな?」
「うん。いいよ。」
「O.K.だよ〜!!!!」
・・・・・やはり青学テニス部のムードメーカーのはレギュラー陣に大人気であって、俺のデータ上、狙っている奴はかなりいるな。
例を言うなら、手塚。確率は85%で惚れている。
あと、2年生コンビも密かに78%の確率で惚れている。
ともかく、競争率が俺のデータを上回るほど高く、攻略不可能な状態という事もあって、データが取れないのだ。
のデータ・・・一体どうなっているのだ?気になる・・・。
他の人が知らないようなデータを取りたい・・・。
『告白してみようか・・・。』
彼氏がいない今がチャンスという事もあったかその言葉がいきなり脳を横切った・・・。、
『ごめんよ・・・手塚。それに、ほかの奴ら。
ちょっと、抜け駆けすることにするよ・・・。』
そして、朝練がおわって、俺はを教室の前で待ち伏せした。
「あれ?貞ちゃん?教室に入らないの?」
「いや・・・。入るが、。ちょっと今いいか?」
「う〜ん・・・もう時間ないし、昼休みでいい?」
「あぁ。わかった。それじゃ、中庭で待ってるから、来て欲しい・・・。」
「?わ・・・分かった・・・。」
・・・・・ちょっと予定が狂ったが、とりあえず、よしとしよう!!
・・・・・そして、昼休み・・・。
「貞ちゃん、話って何?」
「今まで我慢していたのだが、俺はずっとを見つづけていた。
これからは、俺の“彼女”になって他の人が知らないデータを教えて欲しい・・・。だから、付き合ってくれ。」
「えっ!?あ・・・あの・・・ごめんなさい・・・。」
・・・・・・何だ!?俺のデータなら即O.K.の確率75%なのに・・・振られてしまった・・・。
「いや。別に・・・君を困らせる事をしたのは俺だし・・・気にするな!!
それに、そういう反応と言う事は、何かあるのか?」
・・・・・・に振られたが、ちょっとでも役に立ちたい一心で、訊ねてみてしまった。
「じゃ・・・じゃあ・・・1つ聞いてもいい?」
「あぁ・・・。俺の持っているデータの範囲なら何でもいいぞ。」
・・・・・・ここで、俺がにいいアドバイスを言える確率95%ってとこかな?
「実は・・・私・・・好きな人がいて・・・だから、貞ちゃんと付き合えないの・・・。
でも、貞ちゃんとはずっと仲良くしたいし・・・。どうすればいいかな?」
(の好きな人・・・・・気になるな・・・・。よし・・・!!探ってみようか・・・。)
「なるほど。そういうことか。分かった。の好きな人は誰だ?」
「えっ・・・な・・・なんで・・・?」
「やはり、好きな人には幸せになってほしいからな。」
「貞ちゃん・・・。あ・・・・ありがとう・・・。
(データ取られるのかと思った・・・けど・・・どうやら違うみたい・・・。)
じゃ・・・じゃあ・・・言う・・・けど・・・///いいの?」
「あぁ。言ってみろ。」
「えっと・・・その・・・私が・・・好きなのは・・・・
しゅ・・・しゅうすけ・・・なんだ・・・。」
「不二か・・・なるほど。ちょっと待って。調べるから・・・。」
・・・・・・そう言っていつも持参しているデーター帳をひらいた。
その手は少し悔しいのと羨ましい気持ちが入り混じったような震えがあった。
「不二 周助・・・彼女及び好きな人がいる確率・・・0%・・・。
・・・今がチャンスだ!!告白する!!」
「えっ・・・い・・・今!?」
「そうだ。今だ!!」
「そ・・・そりゃ・・・告白・・・したいし・・・
で・・・でも・・・い・・・今って・・・。」
「もしかしたら、今頃、急に好きな人ができていたりして・・・。
さあ、どうする?」
・・・・・お願いだ。早く行ってくれ・・・これ以上、君が悩んでいる顔を見たくないんだ・・・。
「そ・・・そう・・・だね・・・。わかった!!
私、 は不二 周助に告白いたします!!」
「そうだ。頑張ってこいよ!ちなみに今の時間は、教室か屋上にいる確率が高い。
そこに行ってみたらどうか?」
「あ・・・ありがとう!!じゃあ、行ってきます!!」
そういって、足早に去っていった・・・。
しかし、俺は、悲しいという感情は薄れていた。むしろ、達成感のほうが大きい。
俺のいとしい人・・・・・・。
どうか、不二とうまくいきますように・・・・・
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『まずは・・・教室・・・かな?』
私は貞ちゃんのデータを頼りに、しゅうすけ探している・・・。
貞ちゃんの告白を受けて、私も頑張らないといけない意識が働いたから・・・。
本当に貞ちゃんは、“頼れるお兄ちゃん”的な感じで、いい人なんだけど・・・
“恋愛”の対象にはなれない・・・本当に・・・ごめんね・・・。
--------がらっ-----------
「あの・・・。不二くんいますか?」
「あっ!!!どうしたの?不二はここにいないよ〜。」
「あっ・・・そう・・・わかった。ありがとう。探してみるわ・・・。」
「場所・・・分かる!?」
「ん〜。なんとなく分かる・・・かな?それじゃ!!また放課後、部活で!!」
「分かった!!じゃあね!!」
『教室にいない・・・ということは・・・・屋上!!
しゅうすけは《三種の返し球(トリプルカウンター)》を使う天才。
特に“白鯨”は風を使うということもあって、それを体で感じる、とっておきの場所が屋上なんだね!!
なんとなく、そこかなとは思ったけど、まだ、ちょっと恐くて、少しでもいる可能性が少ない教室から回ってみたけど・・・。
もう、場所は近くまでやってきている・・・でも・・・しゅうすけに彼女がいたら・・・・どうしよう・・・。
それだけが、私の頭の中をよぎる・・・。
いや。貞ちゃんのデータはほぼ当たるし、心配はないわ。
それに、貞ちゃんに応援までしてもらっているのに、実行しなかったら、薄情者だよ!!
行かないと・・・・行きます!!』
そして、いつもより重く感じた金属扉を開けると・・・。彼はいた!!
それも、周りには誰もいない!!チャンス!!
「しゅ・・・しゅうすけ・・・///」
「?どうしたの?。」
「えっ。えっと・・・ちょっと・・・は、話があって・・・。
いきなりごめんね・・・。」
「別に・・・いいけど。何かな?」
『かっ・・・かっこいい・・・。ど・・・どうしよう・・・。
心臓が・・・・もたないよ・・・・。』
「あっ・・・あのね・・・。」
『だめだ!!落ち着け・・・・・・。落ち着け・・・・。
よし。いっせーのーでっ!!』
「私・・・しゅうすけが・・・す・・・好き・・・・・。
つ・・・付き合ってください・・・・。」
『い・・・・言っちゃった・・・どうしよう・・・・。
でも・・・貞ちゃん・・・。私は・・・やったよ!!』
「困ったな・・・。」
『えっ・・・どういう事・・・・もしかして、“彼女”がいるの?
だから、“告白”されると、迷惑・・・ってこと!?貞ちゃん・・・どうしよう・・・。』
「あっ・・・あのね・・・別に・・・適当に流して・・・ただ・・・私が言いたかっただけだけら・・・。
それに、彼女にも迷惑かかるし・・・・。ねっ!!」
「?・・・彼女・・・?」
「いるんでしょ・・・彼女・・・・。
だって、私の告白に“困ったな”って言うから・・・。」
「確かに言ったけど・・・・僕は彼女なんていないよ・・・。」
「えっ!?で・・・でも・・・“困ったな”ってどういうこと?」
「それは・・・・」
「?」
「本当は・・・僕から君に言いたかった・・・“付き合ってください”と。
でも、そのような素振りをしたら、乾や英二・他のレギュラーもの事が好きだって言ってたから・・・
そんな奴らがに告白すると考えると・・・嫌だったんだ・・・・。
だから、“困ったな”というのは、先を越されてしまった・・・と言う意味だったんだ・・・。
ごめんね。の気持ちを考えずに言ってしまって・・・」
そう言うと、照れ隠しにそっぽを向いた。
「嬉しい・・・しゅうすけが・・・そう思ってくれているだけで・・・・・へへっ///
では、改めて。不二 周助さん。私と付き合ってください。」
「こら!!また言って!!僕が言う番なのに・・・・まぁ・・・いいか・・・・
喜んで!!!よろしくお願いします。」
・・・・・こうして、私は貞ちゃんのおかげで、大好きな人の“彼女”になれました!!
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「そういえば、こうやって勇気を出せたのも、貞ちゃんのおかげなんだ!!
お礼いっておかないと。」
「乾が?」
「そうなの。実はね、貞ちゃんが私に告白してきて・・・
でも・・・私は正直に“しゅうすけが好き”って言って断ったの・・・・
そうしたら貞ちゃんが、データー帳開いてこう言ったの・・・・
“不二には彼女がいない”ってね!!そのあと、貞ちゃんが後押ししてくれて・・・・
自分も頑張ろうと思って、決心がついたの!!」
「そうか・・・乾・・・・。
は、乾にお礼が言いたいんだろう・・・。いってらしゃい。」
「えっ?しゅうすけは、一緒に行かないの?」
「そんな事したら、気まずいだろ?」
「う・・・うん・・・そうだね・・・
分かった!!じゃあ、また部活で・・・・・それに、行ってきます!!」
「くすっ。行ってらっしゃい。」
・・・・私はひたすら貞ちゃんを探した・・・。
部室、中庭、理科室・・・・どこにもいない・・・・
------キーンコーン カーンコーン------
・・・・昼休みの予鈴が鳴ってしまった・・・・仕方ない・・・
次の授業は情報。用意して、いかなくちゃ・・・・。
そう思いながら、とりあえず教室に戻った。
もうすぐ本鈴がなるのもあって、生徒は私だけ・・・。
「えっと・・・鍵・・・掛けておかないと・・・・。」
そして、鍵をかけようと思ったその時・・・・
「ちょっと待ってくれないか?」
『えっ?この声は・・・・・』
少し驚きを隠せない顔で後ろを振り返った・・・・・
「さ・・・貞ちゃん・・・・・どうしたの?」
「いや・・・。教科書を間違えたもので・・・。取りに来たという寸法だ。」
「へぇ・・・・珍しいね・・・・。早く取ってきたら?」
「あぁ・・・。ところで。不二に会えたか?」
「う・・・うん。会えたよ・・・。」
「そうか・・・で。どうだった?告白は?」
「成功・・・しました///」
「ほう。それは良かったじゃないか・・・。これでは“不二 周助の彼女”となったわけだ。
おめでとう。」
「ありがとう・・・。でも、貞ちゃんのおかげでなれたわけだし・・・。
こっちこそ、お礼言わなくちゃ。」
「いや・・・俺はお礼を言われる事をしていない・・・・
ただ“不二には彼女がいない”というデータしか教えていないし・・・。」
「ううん。私にとってそのデータがどれだけの支えとなったか・・・・
本当に、ありがとう!!貞ちゃん!!」
------キーンコーン カーンコーン------
「あっ。本鈴だ・・・。早く行こう!!貞ちゃん!!
置いて行くぞ!!!なんてね!!」
「そう言う確率98%・・・・」
「あっ!!ひどい!!!あははっ・・・・。
やっぱ、貞ちゃんには敵わないな。」
「当たり前・・・・!!
俺が、に負ける確率・・・0%・・・」
「あっ!!もう!!」
・・・・そう言うとは少し走ってこっちを向いた。そして・・・
『ありがとう。貞ちゃん。それに、これからもよろしくね!!』
そう言ったときの笑顔が、俺の中のデータ至上最高に優しく、柔らかい笑顔に見えた・・・・・・。
<fin>
因みに、その後先生にこっぴどく怒られたのは言うまでもないのである。
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